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インフルエンザ vs ヒト

メキシコのインフルエンザ発生のニュースが報道されてから10日経った。
報道は途中から「豚インフルエンザ」という言葉を取りやめて、「新型インフルエンザ」という名称に変わったが、国内感染者が見つかっていないことから新聞も一面トップの最初の記事ではなくなった。

最初の頃は「これは来るぞ!」と思って、日本の第一感染者を待ちに待っていたところもあり、
人は最悪の事態を想像するのが大好きで、パンデミックにより周囲を見渡すと次々と死者が出るという、悲惨な恐怖を望んでいたようにも見えたが、現実そんなことは起こらず、検疫官の必死の努力により、日本にはきっと感染者が見つかっても被害は最小限に抑えられるだろうと思う。

私は『Re:Genesis』(カナダのTVドラマ)のシーズン3を観ている最中で、テレビを切り替えると、フィクションではなくまさか、現実にも感染のニュースが入るとは予想していなかった。

報道ではインフルエンザの名前を、新型だとかH1N1とか鳥とか豚とか、いろいろ呼び方を変えているので、一般の人は混乱しているのではないかと思う。
ソ連型と新型の違いって一体何の?とか、
疑問に思っている人は多いのではないかと思うのに、あまり深く説明されていない。
「新型」と呼ぶのはいいけど、またすぐに「新型」は出てきてしまう。

H1N1のH1とかN1って一体何なの?という疑問にお答えしましょう。
インフルエンザウイルスは、形をデフォルメして表現すると、このような形をしていて↓
(写真は球状のものを半分に割ったような絵になっている)

influenzavirus New scientis, Jan 7,2006

この絵でいうと、水色の突起部分がH1の「H」=Haemagglutinin
(ヘマグルチニン、日本語では血球凝集素ともいう)
の頭文字に当る。

H1というくらいなので、1以外にも存在し、16まである。
この突起部分が我々の身体の中の細胞内に侵入するときに必要となる。

N1のNは絵で言うと赤い突起部分を示していて、「N」=Neuraminidase(ノイラミニダーゼ)
の頭文字に当る。Nは9種類ある。
こっちの突起は、一旦侵入が終わった後に、細胞から離れる時に必要になる。

このページの説明は分かりやすい。
http://hobab.fc2web.com/sub4-influenza.htm

突起部分が異なると、違うウイルスの「種類」とみなしているので、
H1N1とか、H2N2とかH5N1とかそういう名前が出てくるのだ。

種類がどのくらいあるかは、Taxonomy Browserを見ると分かる。
インフルエンザの種類

1918年   スペイン風邪 H1N1(死者4000万人)
1957年   アジア風邪 H2N2(死者600万人)
1968年   香港型 H3N2 (死者100万人)
1977年~ ソ連型 H1N1 (死者?)
1997年~ 鳥インフル H5N1 (死者260人)
2009年   新型インフルエンザ H1N1 (死者?)

ウイルスは絵でいう、中心部にある色々な色の細長いもの(=RNA、つまり遺伝子)を、
我々の身体の細胞内に入れることが目的で、
これが入ってくると、私たちの身体は自分のRNAと思って増幅してしまう。

突起部位は、この細長いもの(RNA)の情報を元に“造られて”いて、
今回のインフルエンザの情報はGeneBankという公共データベースで見ることができる。

PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、MP、NSの8種類の名前が各部位を示している。
報道でよく言っている8つのセグメント、というのはこれのことね。
(HAというのが、H1のHに当る部分で、NAがN1のN)

GenBank sequences from 2009 H1N1 influenza outbreak
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/SwineFlu.html

今朝の読売新聞で出ていた、「豚ウイルス2種混合か」という記事では
米コロンビア大のラウル・ラバダン博士の暫定解析の内容が載っていた。

この8つの部位の配列をそれぞれ過去のデータと照合して、
そのうち2つ(NAとM)はヨーロッパアジア由来の豚インフルで、
残り6つ(HAなど)は北アメリカ由来の豚インフルだととか。

更には、北アメリカ由来の方は、鳥とヒトも媒介して豚に感染したものと考えられるというので、
いかにして、ウイルスが変化していっているのを追うのが大変かということが分かる。

元の記事
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19193


別冊日経サイエンス「感染症の脅威 パンデミックへの備えは万全か」に掲載されていた、
J.Kタウベンバーガーさんらの記事にインフルエンザの系統樹が載っていた。

インフルエンザの系統樹

これは、隣り合っているものほど遺伝子配列が似ていることを示している図で、
1918年のスペイン風邪のヒトインフルの配列が
アラスカで見つかった鳥インフルの配列とかけ離れていることを示している。
つまりヒトに感染する間にはずいぶん変異や進化が行われていることを表している。

ウイルスは常に、人類の気がついていない間に変化し続けているのだということを
教えてくれる。

インフルエンザウイルスの配列を使って、BLAST検索をやってみた。

BLASTっていうのは何かというと、ある配列情報を元にして、
類似したようなコードを検索してくれるアルゴリズムのことなのだが、
これを使って今回のインフルエンザウイルスの遺伝子領域を検索すると、
当たり前だが100%マッチした配列がものすごく大量にヒットする。
なぜなら、ウイルスを検出した地域や日付ごとに配列情報をデータベースに登録しているので、
同じ感染ウイルスがたくさん見つかる。

これをやってみて思ったことは、

「似ているけども似ていないものを探したい」(由来を探したい)
「日付や時期で迅速に検索したい」(過去データとの比較)

ということだった。

これは国立感染研のインフルエンザ担当の先生が、
欲しいシステムの要望として言っていたことそのものと同じだった。
実際自分がやってみて、ようやく彼の意図がわかったのだ。

H1N1型のインフルエンザは、過去にも1918年のスペイン風邪、
1977年のソ連型でも起きており、
今回のH1N1とどう違うのか?というのが気になったので、
公共データベース(GenBank)より下記の三つの配列を引っ張ってきて、
安易にアライメントしてみた。(要は単に揃えながら並べること)

スペイン風邪のHA部分の配列:AF116575
ソ連型のHA部分の配列:DQ508897
今回のインフルエンザのHA部分の配列(カルフォルニア):FJ966960

Alignment

そのほか解析の参考。

統合ぐらし
http://blog.dbcls.jp/portal/

Did the California H1N1 swine flu come from Ohio?
http://scienceblogs.com/digitalbio/2009/04/did_the_california_h1n1_swine.php

ところで、国立感染研のP4実験室の問題ってどうなったんだろう。
もう稼動しているのかな。それともP3実験室でやってるのかな。

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