まともに見せられるものから…。
課題は「憎しみ」20枚でした。
タイトル:カラーパレット
人 物:
宮城 サツキ(15)中学三年生
宮城 秋枝 (42)母
宮城 久雄 (45)父
吉川 結衣(14)親友
小野 雅美(15)親友
三竹 陽二(32)数学教師
本文:続きはこちら…
○丹沢市立西中学校・三年一組・外観
○同・三年一組教室内
三竹陽二(32)黒斑眼鏡を直し、髭を擦りながら教科書を手に、問題を読み上げている。
宮城サツキ(15)は机に向かって賢明に、定規を使ってコマ割りし、枠の中に人の顔をスラスラ描いていく。
サツキは書き終わると、紙を二つに折って、三竹の方を見、三竹が背を向けた瞬間に、隣の席の吉川結衣(14)に渡す。
結衣は、サツキの描いたとなりのコマに新しいコマを作り、続きを強いタッチで描いていく。
結衣は再び紙を折って、サツキに手渡す。
三竹は黒板に数式を書いている。
サツキは戻ってきた紙を受け取ると、笑いを堪えたあと、紙を飛行機型に折り、窓側の一番前に座っている小野雅美(15)に向かって飛ばす。
教室の中を飛んでいく紙飛行機。
三竹が振り向く。
雅美が受け取ろうとした瞬間、風に煽られて、紙飛行機が開いている窓の外に飛び出していく。
サツキ、立ち上がり、
サツキ「あ!」
三竹、校庭に飛んでいく紙飛行機を見る。
三竹「宮城!またよからぬことをしてるな!?」
サツキ「……取りに行ってきまーす……」
サツキ、教室を出て行こうとする。
三竹「行かせるか!」
○同・廊下
真剣な顔で追いかけてくる三竹。
サツキ、走って逃げる。
サツキ「来ないでよ!私が取るんだから!」
三竹「今日こそ、お前の悪事を見てやる!」
サツキ「見ないでいいっつーの!」
○同・三年一組教室内
生徒達が窓側に集まり校庭を見ている。
○同・グラウンド
タッチの差でサツキが紙飛行機を手に掴み、三竹から逃げて走っていく。
○同・三年一組教室内
グラウンドを見ている雅美と結衣。
雅美「よかった〜。中身、見られなくて」
結衣「さすが元バスケ部だ」
○同・グラウンド
サツキ、三竹から逃げ回っている。
○宮城家・外観(夜)
庭のガレージに車が入ってくる。
○同・玄関
宮城秋枝(42)がハイヒールを脱ぎながら、
秋枝「サツキ!洗濯物干しっぱなしじゃない!何で入れないのよ!(イライラした口調で)そのくらいやってよね……」
○サツキの部屋(夜)
本棚にはぎっしり詰まったマンガ本。
サツキはコミックを読んでいる。
ドアが開き、秋枝が入ってくる。
秋枝「サツキ!お茶碗も洗ってないじゃない」
サツキ、とっさに本を背中に隠す。
秋枝「……また、そんなものばっかり読んで、いい加減にしなさいよ!」
サツキ「何?何か用?」
秋枝「洗濯と洗い物しといてって言ってたじゃない!!何でやらないの?」
サツキ「うるさいな〜。やればいいんでしょ。これ読み終わったらね……」
本の続きを読み始めたサツキに対し、秋枝は勢いよく本を取り上げる。
サツキ「何すんだよ!返せよ!」
秋枝はサツキを平手打ちする。
サツキ「ふざけんなよ!」
サツキ、手を振り上げるが、涙がこぼれてきて、手を出せない。
秋枝「……今すぐやりなさい」
秋枝、部屋を出て行く。
サツキ、跪いて悔しそうに泣く。
○丹沢市立西中学校・外観(夕方)
『西翔祭』と書かれた垂れ幕
○同・三年一組教室内(夕方)
教室には、サツキ、雅美、結衣が机を囲んで話している。
雅美・結衣「有志?」
サツキ「うん。西翔祭でさ、うちらの作品展やろうかな、と思って」
結衣「……サツキなら必ず言い出すと思った」
雅美「作品展って、何を出すの?」
サツキ「大きめのボードにカラーのイラストを描いて、展示する!」
雅美「……楽しそう!私何、描こうかな……」
結衣「私、本気で描くよ!」
サツキ「本当?よかった〜!好きなキャラクターとかさ、何でもいいからさ、描こうよ!ああ!今すぐ描きたい!」
結衣「……ねぇ、有志参加の担当者『三竹』って書いてある……」
全員、沈黙になる。
○宮城家・ダイニングキッチン内(夜)
宮城久雄(45)が一人で食事をしている。
サツキが絵の具で汚れたエプロン姿でやって来て、冷蔵庫を開け麦茶を取る。
サツキ「お帰り。最近、遅いね」
久雄「……何だ、また絵描きか?」
サツキ「うん、西翔祭で作品展やるんだ!」
久雄「そうか。お前はいつも元気でいいな」
サツキ「土日だから、お父さんも観に来てよ」
久雄「そうだな。気分転換に行くかな」
サツキ「本当?必ず来てよ」
秋枝がスーツ姿でやって来る。
秋枝はサツキの汚れたエプロンを見る。
秋枝「……また、勉強しないで、くっだらない漫画ばっかり描いてたんでしょ」
サツキ「くだらないって、どういう意味よ!」
秋枝「やってることが、おかしいって意味よ!
この前三者面談で、先生に成績が落ちてるって言われたばっかりじゃない。少しは高校受験のために勉強しなさいよ」
秋枝は冷蔵庫から缶ビールを取りだす。
サツキ「何よ、勉強しろ勉強しろって!そんなに勉強が大切なの?中学校の勉強なんて、どうせ大人になったら忘れてるくせに」
秋枝「何、屁理屈言ってるのよ。高校行けなくなってもいいの?」
サツキ「いいわよ。私、漫画家になるつもりだから。お母さんみたいに、好きでもない仕事をストレス溜めてまでやりたくないから」
秋枝「あんたね!誰が、あんたに稼いだお金を出してると思ってるのよ!」
サツキ「……またお金の話?よくそれで仕事続けられるね?お父さんが稼いでるんだから辞めればいいのに」
久雄「いい加減にしろ」
サツキ「そんなお金のために働いているあんたなんて絶対成りたくない大人の代表例だよ」
久雄「(大きな声で)いい加減にしろ!」
サツキ、久雄の怒った顔を見る。
久雄「サツキ、お母さんに謝れ」
サツキ「やだ。何でこんなやつに」
秋枝「あんたね!その口の利き方いい加減にしなさいよ!」
久雄「お母さんに謝れ!」
サツキ「ふざけんなよ!私は間違ってない!」
久雄、立ち上がって無言でサツキを殴る。
サツキ「(睨みつけて)私は間違ってない!」
久雄「漫画家なんてなれるわけないだろ!」
サツキ「全然!私のことわかってないよ!!」
サツキ、ドアを物凄い音を立てて強く閉め、出て行く。
久雄「コラ!サツキ!どこ行くんだ!」
○道(深夜)
雨のなか歩いているサツキ。
乗用車が水しぶきをあげて通る。
○架橋の下(深夜)
座り込んでいるみすぼらしいおじさんがサツキの歩く姿を追っている。
サツキ、怖くなって走り出す。
○宮城家・裏側の入り口(深夜)
サツキ、入ろうかどうか迷っている。
ドアが開き、中から久雄がゴミ袋を持って出てくる。サツキ、物陰に隠れる。
久雄、家の中に戻る。
サツキ、裏側の入り口に近づいて、ゴミ袋を見ると、コミックの表紙が透けて見えているに気がつく。
サツキはゴミ袋を開ける。
中には乱雑に入った大量の漫画本と画材道具。
サツキ、画材道具を見つめ、涙をこらえる。
サツキ、涙が出てきて、手でぬぐう。
サツキに降り注ぐ雨。
○同・ガレージ(深夜)
車の窓を絵の具筆で黒く塗り潰しているサツキ。
○吉川家・結衣の部屋の外(深夜)
サツキ、窓をコンコンと叩く。
○同・結衣の部屋内(深夜)
結衣、音に気づき、窓を開ける。
びしょぬれで手にゴミ袋を持って立っているサツキが居る。
結衣「サツキ!」
サツキ「(笑顔で)描いてる?ごめん、遅くに……結衣なら起きてると思って……」